☆勝手コーナー好きになった 図書・書籍紹介(順不同)
ISSN 2187-5049 Vol.09 2014-04-10 (c) naoki inagaki
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11. 『欠陥ソフトウェアの経済学』 Geekonomics The Real Cost of Insecure Software; David Rice著
宮本久仁男監訳、鈴木順子訳 (難解な技術書の訳として鈴木嬢はすばらしい翻訳の成果を残してくれました。翻訳賞!を授けたい) ㈱オーム社刊
本著第5章 完全なる免責:訴えるものなら訴えてみろ・・・149頁より
= なぜ、裁判所は、議会同様、ソフトウェアベンダに責任を課すのをためらうのか?=
・今日に至るまで、コンピュータのセキュリティー欠陥の氾濫にもかかわらず、欠陥ソフトウエアによってもたらされた損害に対し、賠償を受けた原告はひとりもいない。
・十分な安全性を欠くプログラムを開発したソフトウエア設計者に対し、職業的注意義務基準を拡大した裁判所はまだない。
・行為の原因として無過失責任を認めた判例はまだなく、職務怠慢と判断された判例も比較的すくない。
・裁判官は断固として、安全性の欠くソフトウエアはいわずもがな、製造物責任をソフトウエアに拡大することを拒否している。
・安全性を欠く、ソフトウエアを製造したソフトウエア技術者に対して、職務怠慢の罪を認めた裁判はまだない。
・ソフトウエア関連の法律の拡大は、附合契約の強化につながり、ソフトウエア購入者から意味ある救済策を奪っている。
12.『ソフトウェア開発はなぜ難しいのか』-人月の神話を越えて- 大槻繁著 技評SE選書005 技術評論社刊
・筆者は、ソフトウェアは、本来開発するものでなく「つくる」のもだと考えている。
ここで「つくる」という言葉には『作る』のみならず『造る』『創る』といった人間の創造的活動の意味合いもこめている。
・コンピュータはコードに落とす記述によって動くものである。
・コンピュータ世界は、実社会と人間社会の3つの世界が複雑にからみあって成立している。
・ソフトウエアは、本質的困難の普遍性を保持し、複雑性、同期性、可変性、不可視性がある。
・よって、建築や土木工事のプロジェクトとは異なり、段取りを決めて遂行するということが本質的不可能なものである。
・人間の実社会からの要求は、記述の知識体系に馴染まない。
13.『わが国金融機関への期待』-ITリスク管理と事業継続の未来を拓く- 富永 新著 生産性出版2009年7月刊 ISBN:978-4-8201-1920-3
①銀行界は、今、コスト削減の羨望でアウトソーシングが進んでいる。反面、自組織内の企画力・業務推進力に陰りがみられるとする拙者ですら遭遇する局面も多い。
この面で筆者の30年来勤務された日本銀行から業務を見て培った、銀行に対する熱いエールで包まれている。
②各行のシステム担当者には各章、各部で銀行ITシステムの行く末に期待を言葉少なに語られている、一行の重みが身に染みる提言に近い語調※1
で指摘されてもいるので、各人の胸にズシリとくる内容である。
③世界に冠たる金融機関システムの恩恵を殆ど意識していなくてもよい、信頼性あるシステムを構築した。
国民が安心しきった決して銀行引き落としを疑わないのが現状だる。海外では、個人客が全国に亘る振込システムを持たないのである。
(拙者は現在の銀行業務システムは「過剰サービスレベル」にあると思う ※2)
④金融機関のITが、今や社会基幹システムであり、国民経済的に適切規模で決済を担うに必要な安全性・継続性を維持するに、我が国に
今後、 どのような決済システムが眺望され、継ぎ接ぎで来た現システムにも暖かい憂慮を示されている。
⑤システム障害が顕在化する事態は沈静化しているが、技術革新の端境期では、必ず表面化するのも事実である。
クラウド時代を迎え、振替えシステムを空気や水のごとく使える「社会的公器」としての金融システム系全体の経済合理性、継続性、安全性を
公共性と収益性のバランスから、この機会に踏みとどまって再考をする機会を示唆している。
金融業務ICT/SDの教材として良書である。
※1: ①知的生産性や利便性とのバランス良く組み合わせて運用する、高い知見や総合力が望まれる・・・、
②情報把握・管理機能の構築など自主的な問題意識を持って臨んでいくのが適切である・・・、
③その状況に応じて適切な方法を選択することがポイントである・・・、
④システム部門のスキルの空洞化とシステムのブラック・ボックス化が拡がった 等
※2: ①米国では自分の小切手処理が正しく銀行が処理したか?の毎月チェック作業負担を強いられている(小切手とカード社会)
②国民皆保険口座を持てない約4000万人の人がいる
③一方、PBと称して厚い絨毯の上の豪華な部屋で海外避暑計画を相談する優雅な銀行もある。
(金融技術という砂上の楽園でリスク感覚麻痺が世界経済を崩壊させた) 等
14.『スクラムによるアジャイルな組織変革"成功”ガイド』 Software in 30 Days Ken Schwaber/Jeff Sutherland著 ISBN 978-4-04-891236-5 C3004株式会社アスキー・メディアワークス刊
ソフト開発はIDEであろうとプロトタイピングであろうと所詮人間の手作業部分が残り成功の要である、Agile開発手法に秘められたその携る人達の動態運用(マネージメント)を、人間の行動は「金」で動く、そして作業を細分化しその一つ一つを制御(マネージ)するのが管理者(リーダー)であるとする欧米流思想に欠ける人間の行動の原点とモチベーション維持に注視した「SE:人間尊重」のプログラム開発論の解説書である。
米国型マネージメントに毒されて「PM認定資格を取れれば現場で一流のPMだ」との妄想を簡単に破壊してくれる。
(世界的資格認定ブームに則り、英語そのまま翻訳の資格産業化した風潮)には警告となろう。
機を見るに敏な人間集団(スクラム)を創造的自己モチベーションの塊と見立てた、このAgile諸法は名訳に助けられ日本人の心を揺さぶられる。そして現場現場の事情に応じた人間性ある元気な明るいプロクラム開発工程の人間集団をみることになろう。
15.『ひとはなぜ裁きたがるか』判定の記号論 日本記号学会編 厳書セミオトポス7 新曜社 2012年5月18日刊 ISBN 978-4-7885-1294-8
「記号」はある意味「見える化」であるが、抽象的なn次元事象を一言で説明できるツールでもある。SD:システム・デザイン時に沢山の絵と注釈付きで、何を語っているか?この事象の中核機能は何か?を掴みずらくなる時が生じる。
記号論的な鳥瞰は、むつかしい数式を理解することでない。複雑なプログラム寄りのUMLやObject群、そしてAPIの先にある諸現象の動きをまとめてシステムのダイナミックな動きの意味を我々に伝えてくれる。
本書「近代スポーツの終焉?-判定の変容、裁かれる身体の現在ー139~153頁は、証券業界のHLT:high Lebel Transactionや全国銀行協会為替業務等にみらるような、1トランザクション処理が数ミリ秒の世界に突入している現在、システムデザイン設計、非機能デザインに携わる人達にとって、思考のベースを跳躍するに衝撃をあたえるシステムデザインの根本的な発想に転換を余議なくされている身近な比喩としてすごい示唆となっている。特に141頁(スピード・スケートの判定の変容ー男子500メートルの判定は、システム設計家にあってはパラダイム変化を目の当たりにし衝撃を受けるのであろう)
そして、システムが目指すものが本当にユーザーが求めるものであるか?(正確に、多数の顧客に、多種類のサービスを、経済合理的な価格で提供を目指すものであった)完成されたHLT処理機は別の意味合いを醸し出している。それは一部のユーザー(数ミリ秒のトランザクション・アクション(東証の場合アロケーションサービスを使いこなすユーザーに限定される)を可能にするが、アクセスできない残されたユーザー(従来の端末操作で数百ミリ秒かかっている末端ユーザーは端末入力している間に、望むディールはすでに終わっている)を含めたシステム全体が、その使役を果たしているか?の根本問題に突き当たる、当局の監督指標や行政指導値やそのフレームワークを根本的に変える必要性がでてきている。この壁を乗り越えないと全体的パイで有効であった領分のユーザーは離れてゆくであろう。
それらを思考するに、パラダイム変化をわかりやすく我々に伝えてくれる。良書である。
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