☆勝手コーナー好きになった 図書・書籍紹介(順不同)                                        ISSN 2187-5049 Vol.09 2014-04-10 (c) naoki inagaki

 

  1. ヒューマンエラーは裁けるか安全で公正な文化を築くには    芳賀繁監訳 東京大学出版会 2009年10月刊
       原著 Sindney Dekker 『JUST CULTURE』 : Balancing Safety and Accountability 
       【感銘の箇所】
        (1):結果が悪かったと知るこちは、私たちがその結果をもたらした行動をどのように見るかに影響する。私たちは失敗を探そうとする傾向を強める。
             あるいは過失責任までも探そうとする。

         (2):後知恵を使って、人々が予見シ防ぐべき被害をハッキリと見つけることは容易である。その被害はすでに起きているのだから。
        (3):実際には司法システムは、何が起こったのかについての有用かつ公正な説明を引き出す機会からほど遠い。真相の解明は裁判の使命でないし、
             仮にそうだったとしても、特にそれが得意だというわけでもない。
        
       
  2. デザインのためのデザインThe Design of Design : frederick P. Brooks,Jr著 
        訳者:松田晃一 株式会社ピアソン桐原 2010-12-15刊 http://www.pearsonkirihara.jp
     
       今は、「デザイナはデザインされたものを使用することと、それを実装することからますます乖離していっている」
       そして
       英語の"design"という言葉は「デザイン」と「設計」という訳語がある。デザイン(設計)は、人の手によるすべての創造物の中心に存在する最も重要なものである_
       いったい何が素晴らしい創造物を生み出す効果的なデザインにつながるのか?
       それを生み出す効果的なデザイナ(設計者)とは?・・・を探求して、限りなくシステム構築の源流思考を「絵」にして見せてくれる。
       我々は、SE(System Engineer)と呼称し、職務や名刺にも肩書き付きで語っているが、自身でコーディング屋さんやチェンジニア屋、
       そして摺合せ屋に成りきっていないか自照してみる必要があるのでないか?
       その第1歩、心構えが本著にある。
         
       筆者は、60年にわたり5つの分野(コンピュータアーキテクチャー、ソフトウエア、家、本、組織)で、ある時は主デザイナとしての役割を、
    またある時はチームでの協力者として、幾つかの役割を担ってきた。
    その経験から、互いに描く「絵」の違いを表象化し近接する思考の自らの湧き上がるスキルの位値を示してくれるのである。
        
     
  3. 金融危機の教訓』行政と司法の役割分担と処方箋    西村等法務研究所 鰹、事法務 2009年6月刊
        感銘の箇所
         (1):金融機関の取締役の善管注意義務の判断の審理の問題点
          (2):銀行の公共性の議論と善管注意義務との関係。
         (3):金融機関の融資決定に関する最高裁判例の議論の過程。


  4. 環境リスク学』不安の海の羅針盤    中西準子著 日本評論社 2006年12月刊
       【感銘の箇所】
        (1):私がすごく感激した裁判の判決があります。ベトナム戦争に従軍した退役軍人が起こした、ベトナム戦争でのダイオキシンの裁判でした
            ("Agent Orange:枯れ葉剤"Product Liability Litigation 597 F.Supp.740,Eastern Dist. of NY 1984) 裁判官は最終的に和解を勧めて、
           ダウケミカル社と退役軍人組合が和解をした。
           その判決文章がすごい。
           このケースは非常にリスクが小さい。
           また、どちらも証明するのにコストがものすごくかかる。
           ダウケミカル社がリスクがないと完全に証明するのも大変である。
           退役軍人の方も、これで被害があったと証明するこつができない。
           しかし、何らかの暴露があったことは事実である。
           だから退役軍人の誰がどういう病気になってどうういう補償をしろというのでなく、福祉施設のようなもので、
           裁判のために使うと予想されるお金の何分の1かを使った方がいいと勧告した。
         (2):東京都浮間下水道処理場におけるマスバランス思考の取り入れ
       

       
  5.  民事司法システムの将来 憲法化・国際化・電子化    ペーター・ギレス著 小島武司編 中央大学出版部 2005年10月刊
        【講演録】
         1章 司法運営と訴訟手続の領域における世界的な改革動向。
         2章 激動期にある司法システム
         3章 複数国家間での法制度の統一化と同一化:その実例としての民事訴訟法のヨーロッパ統一化
         4章 裁判手続、遠隔通信技術、e(電子)訴訟法


  6. How Risky is Your Company?by Roberrt Simons ; Harvard Business Review Reprint 99311
      翻訳版;企業に潜む「リスク」を測る 「ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス」2000年2-3月号誌には事業が絶好調でもリスクはならない・・・・95頁)

      何をやってもうまくいく。こんな時はリスクなどどこ吹く風だ。市場シェアがますます拡大し、増収増益に沸く企業には、楽観主義があふれる。
      従業員の数はうなぎ上りに増え、事業は拡大の一途をたどる。「さあ、胸が躍るような、新しいチャンスを見つけよう」。
      バラ色に包まれた企業には、未来すら光り輝いて見える。
      ポップスを気取ればさしずめ「まばゆ過ぎて、サングラスがないとクラクラしてしまう」といったところだろうか。

      ちょっと待ってほしい。マネージャーたり者、このような右肩上がりの時こそ、いつにもまして危機に予兆に注意をはらわなければいけない。
      成功には「光」と「影」が同居している。
    そして、
     自企業診断ツールとして、「Risk exposure calculator」を提示している。
     米国企業の株価オンリーのガバナンス短期志向と我が国の企業土壌は異なるが、面白いツールであることに間違いない。



      
  7. 米国の電子情報取引法 UCITA法の解説     弁護士國生一彦著 (社)商事法務研究会

    作業中
      

  8. 逆システム学 -市場と生命のしくみを解き明かす-  金子勝・児玉龍著 岩波新書 2004年11月刊
     【感銘の箇所】
    (1)資本主義的な市場経済は、富める者をますます富まし、貧しい者をますます貧しくする傾向を持っている。
         (2)むしろモデルから排除された「非市場的」な諸制度が、複雑な相互作用を保ちつつ市場経済を制御している。
    (3)食物は、なるべく多様なものをとるのが安全だと考えられる。一つの食物だけ採ると、その中の微量な化学物質でも蓄積性のものは生物連鎖のなかで濃縮され、思わぬ健康障害を引き起こしやすい。
         (4)民主主義の経済的意味
    経済学における競争市場モデル、あるいはネオダーウィズムの立場に立つさまざまな理論の根本的弱点は、非効率な企業や個人が競争淘汰され、効率的な者あるいは強者だけが生き残ってゆくという立場に立つ点にある。たしかに、価格シグナルによる競争淘汰は、市場経済において新陳代謝を促すフィードバックの一つである。しかし、生命体が一個の細胞だけでは生存できないように、あるいは生物が一種では生き残れないように、経済社会は多様性を必要とする。多様性が環境変化や危機への適応能力を高めるからである。
        (5)クラスター解析は1対1の対応を前提とする逆遺伝子から、多数対多数の関係=多重的な制御系を解き明かす
         ための逆システム学をもたらした。


      

  9. 自己調整学習の実践 D.H.シャンク 他著/塚野州一編訳 北大路書房刊 
       「できる職員」の特性は、部署・業務を問わず、よく聞き、学び、他者から知識をいただき、準備しアウトプットする技法を身につけている。                  『自己調整型の気づき』の効用は、学習過程の自己効用感やコントロールの意識を高めることで、自己目標に対する認知や信念の発見である。 

      「ウィンとハドウィン(Winne & Hadwin 1997)の 「3+1段階モデル」」



  10. スーパーエンジニアへの道』-技術リーダーシップの人間学 Geraid M.Weinberg著 木村 泉訳 共立出版刊
       「第7章 自分自身への気づきを高める法
      
        私は3つの事に限定しています。
         第1に、私は何が起こったかを、出来るだけ客観的にレッテルを貼ったり価値判断をくだしたりしないように書きます。
         それから私は、自分がそれにどう反応したか書きます。私が何について考えたか、その為に私は腹を立てたか、それについては何か夢見たかを書くのです。
         最後に何か学んだことがあればそれについて書きます。
      


  11. 『欠陥ソフトウェアの経済学 Geekonomics The Real Cost of Insecure Software; David Rice著
      宮本久仁男監訳、鈴木順子訳 (難解な技術書の訳として鈴木嬢はすばらしい翻訳の成果を残してくれました。翻訳賞!を授けたい) 潟Iーム社刊

      本著第5章 完全なる免責:訴えるものなら訴えてみろ・・・149頁より
       = 
なぜ、裁判所は、議会同様、ソフトウェアベンダに責任を課すのをためらうのか?=
        ・今日に至るまで、コンピュータのセキュリティー欠陥の氾濫にもかかわらず、欠陥ソフトウエアによってもたらされた損害に対し、賠償を受けた原告はひとりもいない。
       ・十分な安全性を欠くプログラムを開発したソフトウエア設計者に対し、職業的注意義務基準を拡大した裁判所はまだない。      
       ・行為の原因として無過失責任を認めた判例はまだなく、職務怠慢と判断された判例も比較的すくない。
       ・裁判官は断固として、安全性の欠くソフトウエアはいわずもがな、製造物責任をソフトウエアに拡大することを拒否している。
       ・安全性を欠く、ソフトウエアを製造したソフトウエア技術者に対して、職務怠慢の罪を認めた裁判はまだない。
       ・ソフトウエア関連の法律の拡大は、附合契約の強化につながり、ソフトウエア購入者から意味ある救済策を奪っている。



  12.『ソフトウェア開発はなぜ難しいのか-人月の神話を越えて- 大槻繁著  技評SE選書005 技術評論社刊 
     
           ・筆者は、ソフトウェアは、本来開発するものでなく「つくる」のもだと考えている。
            ここで「つくる」という言葉には『作る』のみならず『造る』『創る』といった人間の創造的活動の意味合いもこめている。

          ・コンピュータはコードに落とす記述によって動くものである。
           ・コンピュータ世界は、実社会と人間社会の3つの世界が複雑にからみあって成立している。
           ・ソフトウエアは、本質的困難の普遍性を保持し、複雑性、同期性、可変性、不可視性がある。
          ・よって、建築や土木工事のプロジェクトとは異なり、段取りを決めて遂行するということが本質的不可能なものである。
          ・人間の実社会からの要求は、記述の知識体系に馴染まない。




    13.わが国金融機関への期待-ITリスク管理と事業継続の未来を拓く- 富永 新著 生産性出版2009年7月刊  ISBN:978-4-8201-1920-3 
                                                                     

   
@銀行界は、今、コスト削減の羨望でアウトソーシングが進んでいる。反面、自組織内の企画力・業務推進力に陰りがみられるとする拙者ですら遭遇する局面も多い。
  この面で筆者の30年来勤務された日本銀行から業務を見て培った、銀行に対する熱いエールで包まれている。
 
A各行のシステム担当者には各章、各部で銀行ITシステムの行く末に期待を言葉少なに語られている、一行の重みが身に染みる提言に近い語調※1
   で指摘されてもいるので、各人の胸にズシリとくる内容である。
 
B世界に冠たる金融機関システムの恩恵を殆ど意識していなくてもよい、信頼性あるシステムを構築した。
  国民が安心しきった決して銀行引き落としを疑わないのが現状だる。海外では、個人客が全国に亘る振込システムを持たないのである。
   (拙者は現在の銀行業務システムは「過剰サービスレベル」にあると思う ※2
     
C金融機関のITが、今や社会基幹システムであり、国民経済的に適切規模で決済を担うに必要な安全性・継続性を維持するに、我が国に
 今後、 どのような決済システムが眺望され、継ぎ接ぎで来た現システムにも暖かい憂慮を示されている。

Dシステム障害が顕在化する事態は沈静化しているが、技術革新の端境期では、必ず表面化するのも事実である。
  クラウド時代を迎え、振替えシステムを空気や水のごとく使える「社会的公器」としての金融システム系全体の経済合理性、継続性、安全性を
  公共性と収益性のバランスから、この機会に踏みとどまって再考をする機会を示唆している。
 
 金融業務ICT/SDの教材として良書である。

    ※1:   @知的生産性や利便性とのバランス良く組み合わせて運用する、高い知見や総合力が望まれる・・・、
                   A情報把握・管理機能の構築など自主的な問題意識を持って臨んでいくのが適切である・・・、
                  Bその状況に応じて適切な方法を選択することがポイントである・・・、
           Cシステム部門のスキルの空洞化とシステムのブラック・ボックス化が拡がった 等
      ※2:  @米国では自分の小切手処理が正しく銀行が処理したか?の毎月チェック作業負担を強いられている(小切手とカード社会)
          A国民皆保険口座を持てない約4000万人の人がいる
          B一方、PBと称して厚い絨毯の上の豪華な部屋で海外避暑計画を相談する優雅な銀行もある。
            (金融技術という砂上の楽園でリスク感覚麻痺が世界経済を崩壊させた)  等




 14.『スクラムによるアジャイルな組織変革"成功”ガイド』 Software in 30 Days Ken Schwaber/Jeff Sutherland著 ISBN 978-4-04-891236-5 C3004株式会社アスキー・メディアワークス刊
                                            

ソフト開発はIDEであろうとプロトタイピングであろうと所詮人間の手作業部分が残り成功の要である、Agile開発手法に秘められたその携る人達の動態運用(マネージメント)を、人間の行動は「金」で動く、そして作業を細分化しその一つ一つを制御(マネージ)するのが管理者(リーダー)であるとする欧米流思想に欠ける人間の行動の原点とモチベーション維持に注視した「SE:人間尊重」のプログラム開発論の解説書である。

米国型マネージメントに毒されて「PM認定資格を取れれば現場で一流のPMだ」との妄想を簡単に破壊してくれる。
 (世界的資格認定ブームに則り、英語そのまま翻訳の資格産業化した風潮)には警告となろう。

機を見るに敏な人間集団(スクラム)を創造的自己モチベーションの塊と見立てた、このAgile諸法は名訳に助けられ日本人の心を揺さぶられる。そして現場現場の事情に応じた人間性ある元気な明るいプロクラム開発工程の人間集団をみることになろう。




 15.『ひとはなぜ裁きたがるか』判定の記号論 日本記号学会編 厳書セミオトポス7 新曜社 2012年5月18日刊  ISBN 978-4-7885-1294-8
                                                  

「記号」はある意味「見える化」であるが、抽象的なn次元事象を一言で説明できるツールでもある。SD:システム・デザイン時に沢山の絵と注釈付きで、何を語っているか?この事象の中核機能は何か?を掴みずらくなる時が生じる。

記号論的な鳥瞰は、むつかしい数式を理解することでない。複雑なプログラム寄りのUMLやObject群、そしてAPIの先にある諸現象の動きをまとめてシステムのダイナミックな動きの意味を我々に伝えてくれる。

本書「近代スポーツの終焉?−判定の変容、裁かれる身体の現在ー139〜153頁は、証券業界のHLT:high Lebel Transactionや全国銀行協会為替業務等にみらるような、1トランザクション処理が数ミリ秒の世界に突入している現在、システムデザイン設計、非機能デザインに携わる人達にとって、思考のベースを跳躍するに衝撃をあたえるシステムデザインの根本的な発想に転換を余議なくされている身近な比喩としてすごい示唆となっている。特に141頁(スピード・スケートの判定の変容ー男子500メートルの判定は、システム設計家にあってはパラダイム変化を目の当たりにし衝撃を受けるのであろう)

そして、システムが目指すものが本当にユーザーが求めるものであるか?(正確に、多数の顧客に、多種類のサービスを、経済合理的な価格で提供を目指すものであった)完成されたHLT処理機は別の意味合いを醸し出している。それは一部のユーザー(数ミリ秒のトランザクション・アクション(東証の場合アロケーションサービスを使いこなすユーザーに限定される)を可能にするが、アクセスできない残されたユーザー(従来の端末操作で数百ミリ秒かかっている末端ユーザーは端末入力している間に、望むディールはすでに終わっている)を含めたシステム全体が、その使役を果たしているか?の根本問題に突き当たる、当局の監督指標や行政指導値やそのフレームワークを根本的に変える必要性がでてきている。この壁を乗り越えないと全体的パイで有効であった領分のユーザーは離れてゆくであろう。

それらを思考するに、パラダイム変化をわかりやすく我々に伝えてくれる。良書である。







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