IT-ADRセンター ICTに係わる「IT訴訟」の一覧

ITシステムに係わる訴訟（it判例）一覧表 ISSN 2187-5049 Vol.06 2014-01-04 (c)naoki inagaki

１：ITシステムに係わる訴訟一覧
２：事故原因要素別に参考になる主要判例（it-参考判例）一覧
３：参考文献　経済産業省委託事業『情報システムトラブル事例集』（日本弁護士連合会コンピュータ委員会）

　１：ITシステムに係わる訴訟一覧
この表は、システム開発の頓挫やプログラム瑕疵問題やシステム稼動後運用時のパフォーマンス不足や不具合事故等での訴訟を中心に抽出した。
「特許権（審決）、著作権、個人情報保護、IT労働問題、組込ソフト開発」等に絡む訴訟は除いている（別途作成中）。
この表の判例抽出スパンは、ITの技術革新のパラダイム変化が激しい、訴訟戦略の攻出で争点変化等の事由で「平成元年以降」とし最近の事件に重点を置いた。
更新日、2013/10/21 2013/08/1 on IT-CPR研究会（空白部分は更新中）

項番	システム領域	事件番号	事　案　概　要・解説
79	項番73の控訴審　　（上告決定）	東高平22（ﾈ）481号、1267,1268号	みずほ証券株誤発注事件　　　　　　　　　判決要旨（PDF 646KB）　　　　　　　　１：損害賠償請求控訴、同附帯控訴、原状回復を命じる裁判の申立事件　82頁　　　　　　　　２：別紙　113頁 ※東証は、誤発注の再発防止策にも取り組み、ある企業の上場株式数の３０％超の注文を受け付けないなどシステムを変更。誤発注による影響が大きい場合には、注文成立後も取り消しができる仕組みも導入した。高速売買システムにより注文処理速度は速くなっているが、価格が急激に変わった場合は１分間売買を成立させないなどの対策をとり、資本市場の流動性確保と品質向上を図っている。
78	佐賀県警電子申請システム（行政訴訟）		システム開発後利用者が１件もない、行政側の開発工程段階の不明瞭さで会計支払い責任を主張　　　　　（本件は、原告オブスマン側のシステム契約に対する立証不足で敗訴→控訴中）
77	超上流領域の齟齬	東地平24･3･29 　H20（ﾜ）5320号、　24303号東高裁平25・9・26 　H２４（ﾈ）3612号	スルガ銀行 - 日本IBM　システム開発頓挫事件　　　　(第１審判決文：東地平24-5-23　スルガ銀行対日本IBM事件　PDF;535KB) 　§1：:IT判例にみるプログラム開発の争点・・・1/11 　　§2：原因は超上流領域に「システム・デザイン」の異夢があった・・・2/11(1.39MB) (控訴審判決文：東高裁平25-9-26　スルガ銀行ｰ日本IBM控訴事件　PDF;2.83MB）　　　　　　※：控訴審判決文は、第１審判決文と差分方式で表記されている。
76		東地平23･4･6 　H21（ﾜ）16947号	レセプトシステムの開発、請負契約と納期遅れ
75	ITシステム開発の頓挫古典的な訴訟パターン	東地平22･9･21 　　　H19(ﾜ)34948号　H20(ﾜ)18263号	システム開発契約で完成義務はあるのか？　システム開発の完成義務範囲はどこまでか？
74	摺合せ技術不足 ①パッケージ機能の判断 ②Fit&Gap作業の不完全	東地平22･1・22 H18（ﾜ）6445号　H18（ﾜ）14701号	大学統合事務システム開発で本番DBプログラム問題やトラブルの原因帰属問題 ①パッケージ利用型のデザイン過程における非機能、DBにおける排他機能とパフォーマンス等の統合的デザイン力不足 ②パッケージと追加変更作業の「摺合せ技術」の未熟さ
73	証券取引所の責務と誤発注ミスによる過失相殺	東京地平21･12・4 平18年（ﾜ）23958号　　（控訴中）	１：事故モデルは (約170KB) 　　　　　　　　　　２：状態遷移は　（約15KB）　　　　　　　　　　３：その時の「板」は（注：動画では9:30頃の途中から）　　　　　　　　参考：失敗学の立場から（東大　畑村教授）　　　　　　 *関連参考　　　　　　　１：銀行員の端末誤入力（ヒューマンエラーであるかどうか？）は、争点にならなかった判例　　　　　　　２：裁判途中で起きたジャーナリズム（雑誌社）側の顛末　　　　　　　３：上記（雑誌社の設置した第3者委員会報告書）を詠んで感ずること　・・・Ｂｌｏｇより
72	運用付随損害	千葉地平21・4・17 　平15(ﾜ)1131号	「予約チェックインシステム」の障害による航空便の大幅遅延による定期運送業務違反。
71	センターのシステム障害発生時にどこまで業務をカバーすべきか	東地平21･2･5 　平20（ワ）4429号	「「外国為替証拠金取引」」において、センター側のシステム障害（アプリプログラムとDBサーバーの不具合）時に、ちょうど取引を行っていた人が強制的に買ポジションから売付決済されてしまった事案。
70	ソフト契約の性質 CG分野での「要求定義書」の困難性	東京地平20･12･25 　平18(ﾜ)24821号	パチスロ遊技機に搭載するガンダムの３CG化（３次元コンピュータグラフィクスによるシーンデータ）開発基本契約及び個別契約、仕様変更・追加で納入の遅延、開発頓挫。及び（シーンデータの納入が契約上の引渡しに当たらない場合）に，原告に契約上留保された二次的著作物の著作権及び著作者人格権に基づき，納入したシーンデータの複製等の差止めと廃棄を求める事案である。
69	システム契約条項ＩＴデザイン全般	東京地平20･7･16 　平19(ﾜ)22625号	「外国為替証拠金取引」の納入ソフトが不十分なものの、ソフトウエアの故障、誤動作等による免責条項と消費者契約法８条の関係
68	請負契約とコンサル契約の債務範囲	東京地平20･5･2 （本訴）　平17(ﾜ)26733号、　平18(ﾜ)24524号（反訴）平19(ﾜ)11993号	インターネットによる広告事業用のコンピュータシステムの構築，設定及びそのシステムを維持するためのコンサルティングを依頼されたとするサーバー利用代金やコンサル代金を巡る請負契約書と保守管理内容の齟齬
67	カード決済全般に警告	長崎地平20･4･24 平17(ﾜ)162号	預金の過誤払いの事例に関する最高裁判例を引用した上で、カード会社は、不正利用を防止するためのシステムの構築が求められていたのに、これがないままで会員の帰責性を問うことはできない。原告：㈱クレディセゾン　　被告：本村輝行
66	ソフトのリース扱い	東京地平20･4･4 平19(ﾜ)19659号	納入ソフト（リース扱い）のバックアップ機能が不十分であったためにデータを喪失し業務が損失うけた。被告は説明義務を滞った。
65		東地平20･2･27	システム開発費の代替金の要素の錯誤
64	インターネットコンテンツ内容（わいせつ文書陳列，職業安定法違反被告事件）	横地平20･1･17 平19（わ）1356号　平19（わ）1724追記	インターネット配信で猥褻文書陳列し、女性を勧誘した職業法違反事件
63	ＢＭ (特許権侵害差止等請求事件)	東京地19･12・14 　平16(ﾜ)25576号	「眼鏡レンズの供給システム」特許権のシステム利用に対する侵害差止め
62	ソフトウエア開発	東京地平19・11・30 　平17（ワ）21377号　平18（ワ）664号	大手企業の子会社であるソフト開発会社が、海外SAPコンサル経験を持つ会社に業務委託で、日本企業のユーザー先にSAP/R3の日本会計制度にあったシステム開発を依頼した。が、開発途中でパッケージ前提の導入につきFit&Gapで齟齬が膨大になる事が判明し、またユーザーの本社の海外統一会計システム意向と合わなくなりプロジェクトは頓挫したので既支払済み金額を返還請求した事例。　海外パッケージ適応時に頓挫し、契約条項とプロジェクト進行の実態作業解釈のずれが修復できない場合の典型的な事案。
61	プログラムの二次的著作物の認容とそれに対する著作権	大阪地平19・7・26 　平16（ワ）11546号	MS-DOSプログラム著作権とデザイン
60	システム開発の業務委託内容と受託会社の変容による競業避止義務違反の違法性を否定	東京地平１9・3・2 　平16（ワ）20543号	SAP使用システム開発従業員の一斉退社による子会社設立時の委託範囲は？
59		東地平19･2･26	ソフトウエア保守契約　不具合と修復の履行範囲義務はどこまでか
58	プログラム開発	東京地平19･2･13 　平13(ﾜ)19915号	保険代理店会員として『トレーディングシステムの提案書』を提出、それを使って商品先物取引による損害。説明義務違反、断定的判断の提供と合理的根拠の法理違反。
57		東地平19･1･31	口頭の約束における要求定義とPM進行内容は？
56		東地平18･7･24 　H17（ﾜ）13995号　H17（ﾜ）20853	①　日本におけるIT分野での「まかせてください」の意味合いは、（SLA契約概念との相違はどこにあるか） ②　営業スタイルがシステム運用型である場合、コンサル指導のシステム構築をした場合の責任は
55		東地平18・6･27	PM義務と製品途中段階の評価、その範囲の認容
54	開発手法と契約動態	東地平18･4･26	超上流問題　損益プログラムは正しい論理によってプログラム開発納品すべき義務があるか
53		東地平18･4･19	システム開発の範囲と契約内容齟齬
52	商標権侵害。弁護士関与の合意の錯誤無効、公序良俗違反等の排斥	大阪地平18・4・18 平15（ワ）11661号
51	青果物帰属	知財高18･4･12 平17（ネ）10051号	控訴人の著作権複製権ないし翻案権を侵害するソフトの作成
50	米国型PM進行管理	東地平18･4･3	行政（市税）システム開発頓挫　PM進行における「コミュニケーション」とは？
49		東地平18･3･31	プログラム瑕疵の主張判断は？
48	プログラム開発	東京地平18・2･17 平14(ﾜ)11389号	インターネットソフトウエアの請負契約不履行
47	開発委託契約	東京地18･2･10 平16(ﾜ)14468号	システムの開発・運用に関する合意に基づき，原告がシステムの開発・運用に当たり費やした各種開発費・作業費等を回収するまで事業スキームを実現し，原告による開発費等の回収を妨害しない債務を負うにもかかわらず契約を破棄して回収を妨害した
46	プログラム開発	東京地平18･1･30 　平15(ﾜ)6153号	コンピュータシステムの委託契約納入物にソフトの不具合が混入
45	システム構築契約でプログラム不具合内容と保守委託内容（流通VAN事業者）	東京地18･1･23 　本訴平13(ﾜ)26217号　反訴平14(ﾜ)2084号	コンピュータシステムの不具合は構築に当たってのリスク不告知遅怠ない補修をしているので相殺抗弁は失当。
44	システムの陳腐化	東京地18･1･18 　平15(ﾜ)12252号	銀行預金口座の届出印の印影と払戻請求書に押捺された印影との照合問題
43		東地平17･11･29	超上流と要求定義とシステム概要の齟齬、納品製品形態はどこまでか？
42	帰属	知財高平17･9･30 　平17(ﾈ)10040号	文書及び図形作成ソフトウエアの製造・譲渡等の行為について「情報処理装置」に係る発明についての特許法１０１条２号所定の間接侵害（物の発明についての間接侵害）が成立するとされた事例
41	契約の成否	東京地平17・9・21 　平14(ﾜ)28330号　平15(ﾜ)6577号	①　国際電話用のプリペイドカードシステムを開発した原告が，約束に反して被告がこのシステムを採用せず，同カードを用いた国際電話サービスを開始しなかったため，開発費用等の損害を被ったとして，債務不履行又は不法行為に基づく全損害の一部の賠償請求等をした事案について，原告には，少なくとも請求額相当の損害があったとした事例 ②　被告の原告に対する反訴請求債権は，原告の被告に対する損害賠償請求債権をもって相殺され，全額消滅したとされた事例
40		東京地17･9･16 平16(ﾜ)13888号	経営コンサルタントのシステム提案の抱合せでの業務従事
39	上流工程	東京地平17・7・27 平16(ﾜ)9142号	コンサル会社がユーザとベンダーの中間に入り、パッケージを使ったシステム業務開発を委託したが、稼働にいたらなかった事案。コンサル会社が原告となりベンダー側に債務不履行とした訴訟。
38	新技術ICタグシステムをめぐる（特許）親子会社間の経営戦略の齟齬	東京地平17･6･22 平14(ﾜ)28723号平15(ﾜ)7005号	ICタグを活用した新物流システムを武器とするシステム開発方法（技術転移の範囲）と、運用にまつわる囲い込みのビジネスモデル戦略の親会社思惑先行で子会社との役員層間で齟齬が生じて「脇が甘かった！」時（信義則違反、協力義務違反）が問われた事例本訴原告：東京納品代行㈱　本訴被告：㈱先端情報工学研究所
37	延滞と未完成	東京地17･4･22 　平14(ﾜ)2077号	書籍在庫管理システム開発等の請負契約について，業務の範囲等が争われた事案:請求額の一部認容
36	契約に至る過程とその請負契約の解釈	東京地17･3･28 　平15(ﾜ)2334号	請負契約を解除（当初より見積り額がSA工程で肥大化）されたことによる損害賠償請求。
35	システム障害とシステム保守責任	東京地平17・3・25 　平16（特わ）752号	インターネットサービス業者にプログラムの脆弱性を指摘した後に、不特定多数の聴衆にセキュリティーホールから進入し個人情報ファイルを入手し映像実演公開をおこなった。被告は懲役8ヶ月、訴訟費用全額支払え
34	契約の成否	東京地平17・2・23 　平15(ﾜ)7476号
33	不具合の法的判断	東京地平16・12・22 　平10(ﾜ)23871号	販売管理システムの請負契約の納入システムに重大な瑕疵が認められて契約解除が有効となった事例被告は￥3258万、訴訟費用3/4支払え
32	契約書の「基幹システム立上げ」の解釈	東京地平16・10・29 　平15(ﾜ)15691号	「新基幹システム」のシステム範囲と「立ち上げ」の意味・検証の内容の相違でボーナス労賃を支払わなかった例で、信義則・権利濫用を生じる余地があるとされた事例；「オリエント信販事件」
31	旧技術システムの限界	東京地16･9･22 　平14(ﾜ)26798号　平15(ﾜ)12257号	盗難預金通帳の払戻し時の印鑑照合事務は過失でないとされた
30	プログラム瑕疵	東京地16･6･23 　平12(ﾜ)23214号　平13(ﾜ)15547号	ソフトウェア開発委託契約が未納入と業務委託契約は未履行、反訴は現状回復権
29	著作権侵害	東京地平16･6.18 　平14(ﾜ)15938号	特定の第3者にのみ許諾されたプログラムにつき、許諾を得ずプログラムを貸与した行為は貸与権の浸害である。貸与を受けた者は使用料相当の不当利得返還が認められた事案。
28	三菱商事株主代表訴訟。取締役等のコンプライアンス態勢の構築義務違反で、作為義務の内容を具体的主張立証は容易でないと判示	東京地16・5・20
27	著作権、著作人格権侵害の認容。プログラム成立と同時に移転。	東京地16・4・23 平15（ワ）6670号
26	PM義務と協力義務	東京地平16･3･10 平12(ﾜ)20378号	国保とSI業者において、請負契約時のSI業者に「PMの適切な対処の義務」があると明確に判示された事例。
25	上流工程の齟齬	東京地16･3･7 平14(ﾜ)11372号	「サクセスコール24」と称するハード、ソフト、保守運用含む総合的なパートナーリース契約におけるシステムデザイン・要求定義不足、使用不安定、補修しない事案
24	業務パッケージの解釈	名古屋地平16･1・28 平11(ﾜ)3685号平12(ﾜ)335号	愛知県海部郡におけるNEC社製地方自治体向け提案の『総合行政情報システム』の範囲とサブシステム接合時の齟齬で頓挫した事例
23	納入プログラムに瑕疵があった場合の判断	東京地平15・11・5 平11(ﾜ)2327号	スーパーマーケットに納入されたEOSシステムに瑕疵があり、請負契約の解除
22	組織的なコンピュータソフトウエアの複製不正利用及び取締役の管理体制不備に対する連帯賠償義務がある	大阪地平15・10・23 　平14（ワ）8848号
21	著作権	東京地15･5･28 　平14(ﾜ)15745号	被告の作成したソフトは他社（訴外）の著作権を侵害しており法律上の瑕疵があると主張した
20	ソフト活用によるビジネス・モデル	東京地14･9･17 　平14(ﾜ)1572号	プログラムを用いて事業を展開するという合意が成立し，原告は本件プログラムを提供し続けたが，被告の支払いが滞り，そこで，被告の支払うべき代金額の確定と支払額の軽減を内容とする確認書を当事者で取り交わした事案
19	成果物帰属：本訴:著作権侵害差止等請求反訴:開発委託費等請求	大阪地14･8･29 　平11(ﾜ)965号　平11(ﾜ)13193号	著作権の持分ある開発ソフトの販売権独占の関係で、本件ソフトウエアの複製，販売等の差止め及び破棄
18	コンサル会社の幻想	東京地平14・4・22 　平10(ﾜ)22251号　平11(ﾜ)18926号	コンサル会社がユーザー側の指導・助言役としてコンサル業についた３者契約であったが、稼働に至らなかった。ユーザは納入プログラムの不具合が多く、旧システムに戻し混乱を極め開発ベンダーに損害賠償請求したが、納入プログラムには、ユーザの使用に耐えない重大な瑕疵がありベンダーの全面敗訴。
17	取締役の善管注意義務・忠実義務	大阪地平14・3・13 　平11(ﾜ)4605号	住友信託銀行のプロジェクトファイナンスに対する株主代表訴訟で棄却された事例役員16名はそれぞれ￥56億円支払え
16	成果物帰属	大阪地13･3･27 　平12(ﾜ)8604号	著作権保有ソフトの不正利用差止め
15	瑕疵	那覇地平12･5・10 　平10(ﾜ)718号	コンピューター・ソフトウェアの開発業務において、その目的及び欠陥の有無について判断した事例
14	ソフトウエアの瑕疵判断	広島地平11・10・27 　平8(ﾜ)805号	ユーザーはリース会社の提案を受け３者で開発契約を締結。ベンダーが完成納品した残金を支払えの起訴に対し、被告（発注者）は納品物が業務に耐えられない瑕疵があり、納品物は債務不履行であるとした事案。
13	契約の成否	東京地平10･12･21 平8(ﾜ)20909号	運転を疑似体験させる装置の共同開発契約の開発をXYが行った、Ｘは担当分野の開発を終えたが、Ｙが担当分野の開発ができず、右契約の締結に至らなかったときに、契約締結上の過失に基づきＸのＹに対する開発費用の損害賠償請求が認められた事例
12	瑕疵	東京地平9･9･24 平6(ﾜ)8866号	コンピューターを導入する以上、自らも積極的に売主との打ち合せに応じ、売主に協力すべき信義則上の義務があるとした事例（原告：コンピューターシステムの販売等を目的とする株式会社、被告は図書教材の販売等を目的とする有限会社）
11	プログラムの欠陥認定に検証実験をして確定をした	東京地平9・2・18 平4(ﾜ)14387号平5(ﾜ)16569号	ダイセーロジスティック㈱は、丸紅㈱に「ソフト開発委託」をし、それをNS&I㈱に「再委託」をした。NS&Iの納入プログラムに瑕疵があるとされ稼働しなかった。その瑕疵部分は開発段階であるダイセー㈱の具体的かつ適切な指摘がなかったので「プログラムの欠陥といえない。納入プログラムに不具合はない」として、裁判所はその認否のため約２年余の実環境検証実験をおこなった。
10	契約の成否	東京地平7･6･12 昭63(ﾜ)10976号	コンピューター・プログラムの製作委託契約に基づく受託者のプログラム・ステップ数が予想を大幅に超えた場合において商法５１２条に基づく報酬請求権が否定された事例
９	遅延と未完成	東京地平6･1･28 昭63(ﾜ)11776号平元(ﾜ)3052号昭63(ﾜ)11795号	①　コンピュータ・システムの代理店契約、ユーザー契約について、システムの欠陥を理由とする債務不履行が否定された事例 ②　バックアップ体制の不備を理由とする債務不履行が否定された事例
８	納入プログラムに重大な瑕疵がある場合	東京地平5・1・28 昭62(ﾜ)6311号	JIS製図規格のトレース作業処理用という特殊業務の納入プログラムに重大な瑕疵があり、請負契約の解除及び損害賠償が認められた
７	遅延と未完成	仙台高平4･4･21 平4（ﾈ）344号	ファイナンスリース契約において、サプライヤーと緊密な業務提携関係や相互依存関係にあるリース業者が、サプライヤーの債務不履行に重大な関与をしているとして、ユーザーに対するリース料の請求が信義則に反することを理由に棄却された事例
６	受注者のソフト性能保証義務	大阪高平3・5・29 平元（ネ）1731号	提携リース会社の見積力不足に加え、ベンダー側も納入ソフトの性能が出なかった時にユーザー側の資料提供不足を主張して泥仕合となった事案
５	遅延と未完成	東京地平3･2・22 昭62(ﾜ)473号昭62(ﾜ)4869号	コンピュータソフトウェア作成契約が請負契約であるとして、プログラムを完成できなかったソフトウェア業者の代金請求が棄却され、発注者の前渡金返還請求が認められた事例
４	瑕疵	東京地平2･3･30 昭61(ﾜ)6549号昭61(ﾜ)16768号	①コンピュータープログラムの改造・ソフトウェア作成等を請け負った者に債務不履行責任が認められた事例 ②コンピュータープログラムの改造等を請け負った業者に債務不履行があった場合につき、検収後発見されたプログラムの誤りの修正についても損害賠償責任を負うとされた事例
３	遅延と未完成	札幌地平2･3･26 昭63(ﾜ)757号平元(ﾜ)372号	リース契約について、未引渡しのソフトウエアも目的物件に含まれると認定したうえ、リース物件の引渡義務の履行がないとして、リース会社からユーザーらに対する未払リース料相当の損害賠償請求が棄却され、ユーザーからリース会社に対する既払リース料の返還請求が認容された事例
２	遅延と未完成	東京地昭63･12･23 昭59(ﾜ)5185号昭59(ﾜ)9232号	①　穀物相場分析プログラムの磁気記録円盤の譲渡契約の法的性質 ②　解析に高度の知識を要することを知らないでプログラムの磁気記録円盤を購入した買主に動機の錯誤があったとして、同契約が無効とされた事例
1	遅延と未完成	大阪地昭63･4･27 昭60(ﾈ)1497号	コンピューターのリース契約のほかにサプライヤーとユーザーとの間に直接当該コンピューターのソフトウエア作成に関する契約が締結されていた場合においてユーザーに対するサプライヤーの債務不履行責任がないとされた事例

注１：本表は、狭義のITすなわちソフトプログラム開発・納入に焦点をあてた一部分であり公刊されていないと思われる事案もある。

注２：本事案は判タ、判時、金商判、金法等を公判と解釈し、なるべく最新を優先した。これら事案はいずれ（通常２～３年後）一般公刊誌で掲載されることがある。
　　　尚、審級も未チェック（2009/6現在の公刊判例集はチェック済み）である。

注３：日弁連テキストは内部研修用であり判決文の全文は掲載されていない。（争点や講師のコメント中心：請求、損害は省略されている）

注４：参考になると思われる知財高裁のITに関する一部を抽出した、システム特許に絡むBM訴訟（特に電子債権モデル特許）が今後多発が予想される。

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特別考察

Ａ	延滞と未完成	東京地13･10･17平13(ﾜ)16792号	ゲームソフト、2次的著作物、請負契約
Ｂ	延滞と未完成、解除	東京地13･3･2平10(ﾜ)28814号　　　　　　　　平11(ﾜ)9367号	N/A
Ｃ	延滞と未完成	東京地12･11･24平7(ﾜ)2630号　　→控訴棄却あり（記入表）	N/A
Ｄ	契約の成否	東京地12･9・21平11(ﾜ)6181号東髙12･12・19平12（ﾈ）5144号和解	システム開発の先行開発で、共同作業時の清算

注１：判例マスタはCD-ROM版で絶版。新日本法規出版社が発行、収容件数はそれほどでもなく、目次と判例要旨、争点程度しかない。
　　　最近はＷｅｂサービスである「eｰhoki」（有料）にシフトしており、商品は絶版扱いである。。

注２：このような平成１0年代のシステム要件未確定やソフト会社の未熟また請負契約の曖昧が混在した中での事案であり、経産省がモデル契約案を作る背景となった。
　　　（損害額算出の研究題材としては古い材料である）

注３：弁護士教材である『日弁連テキスト』は、最近のIT技術革新でパラダイムシフトがありシステム基盤概念や開発理念・技法が根本的に変わっているので、教材とそての判例題に疑義を感じる。
　IT訴訟の理解には、根底となるコンピュータアーキテキチャーステージが変容していることを前提にコメントや解説に掲載せず、現下の事案と同様に扱かって「契約論」の教材にしているが、このようなA～Dを提示した弁護士奥村徹、飯田直久の意図を聞きたいものである。

２：事故原因要素別に参考になる主要判例（it-参考判例）一覧
　　作成中

３：経済産業省委託事業『情報システムトラブル事例集』（日本弁護士連合会コンピュータ委員会）
　参考文献（PDF：1.24MB）

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